ドクター

数多の症状と向き合おう|ストレスを放置しないで原因徹底究明

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心が病気になる原因と治療

ナース

脳科学から見た心の病

人間を含むあらゆる生物は、環境の変化に適応して生き延びるだけの能力を持っています。そうした能力を獲得した種だけが進化の過程で淘汰され、過酷な生存競争を勝ち抜いてきたのです。文明の発達した現在では、この高度な適応能力がかえって仇となり、さまざまな症状の原因にもなっています。環境の変化に素早く適応するためのメカニズムが、時として心身を攻撃する場合もあるのです。環境の変化は人体に加わるストレスの形で心身に大きな影響を及ぼします。人体はストレスを感じると、環境の変化に対応するために自律神経を調節しにかかります。防御が必要なときには戦闘や逃走に適した体の状態となり、休息が必要なときには睡眠に相応しい症状が現れます。適度なストレスは人体の健康を維持するためにも欠かせません。許容範囲を超えるほどのストレスが加わることで脳の扁桃体が過剰に働き、交感神経を活性化させるホルモンが分泌され続けるのです。中でも副腎皮質から分泌されるコルチゾールというホルモンは、脳内で増えすぎると神経細胞を破壊しかねません。扁桃体が異常に興奮した状態が長く続いた場合、記憶を司る海馬が萎縮する事実も知られています。扁桃体が暴走して副腎皮質へのコルチゾール分泌指令が止まらなくなると、脳の前頭前野にまで悪影響が出てきます。こうした過剰なストレスの起きている脳では、思考や判断を司る前頭前野の血流が悪化してしまうのです。ストレスに対する扁桃体の耐性には個人差があって、耐性が低い人ほど脳の環境が乱れやすいと言えます。精神科ではこうした脳科学の知識を治療にフル活用しており、ストレスを適切に処理できるような治療を行っています。

脳科学を応用した治療法

精神疾患の中でもうつ病や適応障害・不安障害の症状は、特にストレスの影響が大きいと考えられています。こうした病気を治療するには、原因となったストレスの除去が最優先とされます。その上で抗うつ薬や抗不安薬などの薬を使って症状を改善させていくのです。身体疾患では病気の原因を取り除くことが治療につながるように、心の病気でも発症の原因から離れることが治療の第一歩となります。治療の第二段階として、同じストレスを受けても病気が再発しないよう耐性を高めることが欠かせません。脳科学を応用した治療法では、特に扁桃体を鍛えて暴走しないようにする工夫が役に立ちます。そのためには薬よりも心理療法が効果的です。薬の力で扁桃体を抑え込むのは難しいですが、精神的なストレスは心の側からコントロールすることができます。心がストレスに強くなることで扁桃体も暴走しにくくなり、コルチゾールの過剰分泌も防止されるのです。心理療法の中でも認知行動療法は、多くの精神科や心療内科で活発に行われています。カウンセラーとの対話を通じて物の考え方や受け止め方を変えていくのが、認知療法と呼ばれる手法です。これに行動を改善させる行動療法を組み合わせることで、幅広い精神疾患の治療に応用が可能となります。認知行動療法を通してストレス対処法を学んでいけば、心の病気の再発予防にもつながっていくのです。ストレスに強くなれば、心の病気だけでなく心臓疾患や脳卒中など身体疾患の発症リスクも低くすることができます。ストレス社会に生きる人たちが心身の健康を維持していくには、こうした対処法が不可欠です。心療内科や精神科の人気が高まっているのも時代の要請と言えます。